話し方が冗長で,ちょっとうんざりするんですが,論点は明快でなかなかいい視点でした.物語には型があるので,初心者でもパクればいい話が書ける,ちょっとした変形でオリジナリティーを出す,ということでした.これで才能のない人も小説が書けるという.しかし,この本はこれだけにとどまらず,この物語の一般性が,社会をも動かしているとしています.物語が型どおりに進行すると,大衆は安心するという心理を逆手に取って,政治をコントロールしているという議論です.例えば,小泉劇場.内容を深く問う事なく,対抗勢力,なんとなくイメージとしての敵を作り上げ,物語化していると.例えば,9.11後のアメリカ.悪の枢軸を仕立て上げて,理由のない戦争に世論を向かわせたと.これは物語としてのカタチだけあって,中身の矛盾は問われない良い例だ,とのことでした.
うーん,なーるほど.
これをうまく使えば,会議をコントロールして状況を自分の都合の良い方に向かわせられるな.単純に敵役を作るんじゃなくて,ま,錦の美旗や,変化の動機となる事件など,必要な条件があるんですが,これらを構造的に思考して設定する.めんどくさいなー.こういうのを策士というのでしょうね.
さて次の本は,「稲盛和夫の哲学」です.稲盛和夫という人は京セラを一代で巨大企業にした人らしいです.稲盛財団という財団を作った人でもあるようです.財団助成を常日頃狙っている私としては,ちょこっとキーワード的に引っかかります.稲盛財団は京都賞というノーベル賞を補完するような賞を運営しているところでもあります.自然科学分野にも貢献しています.
ちょっと読んだ感じでは,最新の自然科学の成果を引用しながら,しかし,思考は無根拠な哲学という,キメラのような内容です.宇宙の成り立ち,物質の成り立ちを語りながら,輪廻転生を信じるみたいな,これだけ書くといったいどういうつながりがあるのか分からないような内容ですが,どこか遠藤周作的であり,理解できます.
で,もう一冊,予約本を買いました.
なんと遠藤周作の新刊です!
つい最近,遠藤周作の未発表原稿が発見された模様です.知らなかった.
アサヒコムの記事
こいつは非常に楽しみです.
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